6月15日(月)に4度目の一般質問に立ちました。
今回は、登壇前後のマスクの着脱、飛沫の飛散防止のためのアクリル板の中での質疑と新しい形での一般質問でした。『今後の本県における交通ネットワークの維持について』大きく3項目に渡って質問させて頂きました。
(質問趣旨)
糟屋郡には7町それぞれにコミュニティバスや福祉巡回バスが運行されています。しかしながら、各町内ごとの運行がメインとなっているために、特に町境にお住まいの方はご不便を強いられているのが現状です。また、民間事業者との路線の住み分けやドライバー不足、自治体の財政的な負担などなど多くの課題を抱えています。
2045年まで人口増加が見込まれる糟屋郡ですが、少子高齢化は他の自治体同様に進んでいます。「免許の返納を考えている。」もしくは、「家族に返納を求められている。」とのお声を多く聞きますが、鉄道・バスともに路線がない地域も多くあるため、自家用車を手放せない状況が続いています。自動運転化技術など技術の進歩が待たれますが、同時に交通政策として、考えるべき時(既に遅いくらい)だと思います。各町の首長さんや担当課の方は、民間との折衝などで住民の皆さまの利便性の向上を目指し尽力しておられますが、「利益を優先する民間事業者」と「人口減に直面し財政基盤も脆弱な町」が交渉するのは、限界がきており、市町村が連携し、スケールメリットを活かして各課題解決に向けて取り組むべきだと考えます。今後、県が関与すべきことは多く、財政支援はもとより、市町村の意向を取りまとめて先頭に立って民間事業者の折衝に当たるべきだと考えます。
今後、地域振興策と鉄道やバス等の利用促進策を大きな枠組みで考え、行政と民間で「新しいまちづくり」をすすめていくべきだと考えています。
以下、知事の答弁を受けての指摘と要望の全文です。
民主県政クラブ県議団の冨永芳行です。
通告に従いまして、「本県における今後の交通ネットワークの維持」について質問させていただきます。知事は、これまで「交通ネットワークの維持」という表現を多用されてきたものと認識しています本日、私は地元の「篠栗駅」から県庁があります「吉塚駅」までJR九州の中でも輸送密度の高いJR篠栗線「福北ゆたか線」を利用して参りました。県道607号線が非常に混雑するため、定時性を確保できる鉄道は本当にありがたいものだと実感しております。生活に欠かすことのできない交通ネットワークを維持することはもとより、地域のニーズに合った交通ネットワークを形成することが、県民生活の質の向上に寄与するものだと考えます。ところが、
A.JR九州が公表した赤字路線区について
先月27日JR九州は、運行する線区の収支、とりわけ赤字となっている区間の2018年度の営業損益を公表しました。公表した理由について、JR九州の青柳社長は、「鉄道利用のお客様が大きく減少し、今後は人口減少や高齢化も進む。厳しい状況を沿線住民の皆さまと共有し、ローカル線の維持継続 策を考えたい。」と述べられています。しかしながら、JR九州は、2017年に被災した日田彦山線の鉄道復旧の条件として、年間1億6,000万円もの運行費用を沿線自治体に対して求めてきた経緯もあり、突然の公表に、当該線区の利用者のみならず、県民、とりわけ、沿線自治体の関係者や住民はそれぞれに危機感をあらわにされています。ここで強く申し上げたいことは、この営業損益公表の前日5月26日は、日田彦山線の鉄道復旧を一貫して求め続けてこられた東峰村の渋谷村長が 住民説明会において、鉄道での復旧を断念し、「JR側が提案するBRT案を延伸するという県の意向」(これ)を容認するという苦渋の決断、方針を表明された日であるということです。このタイミングでの公表は、今後、赤字路線が自然災害に遭っても「基本的には鉄道での復旧は困難である」とのJR側の強い意思表示に他ならないのではないか?と強い危機感を持たざるを得ません。そこで、今回のJR九州の赤字路線の公表に関しまして4点お聞きします。
- 1点目に、鉄道事業の公共性、公益性に対する知事の認識を改めてお聞かせください。その上で、今回の赤字路線の公表理由をJR九州の青柳社長は、「鉄道を一企業だけで維持するのは非常に大変」とも述べておられますが、知事は、JR九州という「一企業」についてどのような認識をお持ちなのかをお聞かせください。
【知事答弁】
鉄道事業は、住民の日常生活の維持はもとより、地域経済や社会の発展に大きな影響を及ぼす極めて公共性、公益性の高い事業である。特に、完全民営化に際しての経営安定基金の取り扱いや平成30年度まで行われていた固定資産税などの税の優遇措置などを勘案すれば、JR九州を一般の民間企業と同列に論じることはできず、より高い社会的使命を有していることを認識した上で事業運営を行ってもらう必要があると考えている。
- 2点目に、全国的にJR各社は赤字路線を抱えながらも企業活動を継続しているものと認識しております。JR九州が今回、このような公表を行った「真意」について知事は、どう認識されているのかお聞かせください。
また、渋谷村長が「知事の鉄道復旧断念の明言は重たい」と発言されているように、知事が「日田彦山線の鉄道復旧の断念」を明言されたことが、今回の赤字路線の公表の引き金になったのではないかと考えますが、知事の考えをお聞かせください。
【知事答弁】
JR九州の青柳社長は、線区別収支の公表の際の定例記者会見で、「赤字ローカル線を自社だけで維持していくのは大変であり、維持していくには改善が必要である。そのための検討を地元と一緒に進めていく前提として、基礎データを共有する必要があることから公表に至ったものである。」旨の発言をしている。なお、青柳社長は、昨年7月の定例記者会見で、線区別の収支について公表する方針を、既に明らかにしており、日田彦山線の議論とは関連はないものと考えている。
- 3点目に、今回公表された線区の利用者、沿線の自治体や住民の方の反応をどのように捉えておられるのか知事の考えをお聞かせください。
【知事答弁】沿線自治体に確認したところ、
ⅰ)鉄道事業の収支は黒字であり、公表するのならば、黒字の路線も含め、全線区の収支を公表すべきである。
ⅱ)利用者の拡大については、JR九州が、まずもって検討すべきである。
ⅲ)JR九州は、廃線を目指していると言われないような丁寧な対応をすべきである。
ⅳ)JR九州は、上下分離を考えているのではないかと懸念している。
といった声をお聞きしたところである。
- 4点目に、今回公表された20線区のうち、7線区の沿線自治体では、既に九州運輸局や県を交えた検討会を立ち上げ、利用促進策の検討を始めているとのことですが、本県内に所在する線区ではそのような動きがあるのか?あるのであれば、どのような検討がなされているのか?県の果たすべき役割とともにお聞かせください。
【知事答弁】他県で設置されているような関係者による線区の活用に関する検討会は、本県においては設置されていない。なお、JR九州は、地元自治体に対し、線区を活用する取組みを行いたいとの意向を示しているが、自治体側は利用促進に限ったものでなければ受け入れられないとしている。
B.次に、本県内において、これまでに廃線となった鉄道路線についてお聞きします。
我が国の近代化と鉄道は切っても切れないものであり、特に産炭地であった北海道や本県を含む九州地方では、無数の石炭列車が走り、鉄道路線の拡大に伴って、
沿線地域は活性化され発展し、鉄道は住民生活の一部となってきたものだと認識しています。私の地元、糟屋郡にもかつて「吉塚駅」を起点として粕屋町、志免町を経て、宇美町に至る国鉄勝田線が1985年の廃線まで走っており、その前身は、沿線の大小50の炭鉱からなる粕屋炭田から産出される石炭の輸送や宇美八幡宮への参拝客を輸送するための鉄道路線でありました。他の路線同様に、石炭産業の衰退や道路の整備、自動車の普及等による「鉄道利用者の減少」を理由に廃線とされたことは、今日の住民生活や沿線自治体の「まちづくり」に大きな影響を及ぼしているものと感じています。そこで、本県における鉄道の廃線について、3点お聞きします。
- 1点目に、本県において国鉄時代を含め、廃線になった鉄道路線はいくつあり、廃線後にどのような代替手段となったのか具体的にお答えください。
【知事答弁】県内で鉄道が廃止となった路線は、昭和36年の国鉄「芦屋線」から平成元年のJR九州「宮田(みやだ)線」まで合計11路線である。そのすべてにおいて、代替輸送手段として、バス事業者による路線バスが運行された。
- 2点目に、廃線決定の前後で鉄道事業者と県や沿線自治体はどのような議論を行い、それぞれがどのような役割を果たしてきたのかお聞かせください。
【知事答弁】昭和55年12月に日本国有鉄道経営再建促進特別措置法が制定され、赤字ローカル線の廃止が、同法に基づいて実施されることになった。同法では、廃線の申請の前提として、九州運輸局長、知事、沿線首長、国鉄九州総局長等による協議会において、代替輸送計画等について協議するとされており、本県及び沿線の自治体は、「代替バスが運行され、5年間は赤字補填がされるが、その後、減便等でサービス低下とならないように、国が行政指導すること」、「地元要望等を勘案したダイヤ編成を行うこと」などの意見を述べたところである。
- 3点目に、廃線後の代替手段の現在の状況、及び沿線自治体への影響を知事はどのように認識されているのか廃線直後の状況と比較してお聞かせください。
【知事答弁】先程申し上げた廃線後の代替バスについては、その後、地域の実情に応じ、それぞれ路線の見直しを行いながら運行の継続を行うことで、今日までほとんどの路線において、地域生活のための路線が確保、維持されていると考える。
C.最後に、バス路線の維持とコミュニティバス等の運行についてお尋ねします。
路線バスの利用者減少も深刻であり、本県の2018年度の路線バス利用者数は2億7,206万人。これは、ピーク時の1969年度比で-49%、1989年度比でも-27%の減少であり、鉄道同様に減便や路線の撤退が相次いでいます。県は国と共に、広域・幹線的なバス路線維持の為「福岡県バス運行対策費補助金」を交付しており、2019年度は9事業者42系統の路線に対して、約1億5,000万円が交付されています。同様に、各市町村においても、国や県の補助対象とならない路線へ補助金交付をしたり、コミュニティバスなどの運行で、地域住民の移動手段の確保と利便性の向上を図っているものの、その財政基盤は脆弱であり、利用者の減少が続く中、路線維持の費用負担は増大し続けています。また、地域住民のニーズに応えるために、コミュニティバスの路線の見直し等を検討することは、民業圧迫に繋がる恐れもあるとして、既存事業者との折衝がうまくいかない、最悪のケースでは既存路線の喪失や営業補償の問題にも発展しかねないとの懸念があるなど、自治体担当者の様々な苦悩を聞き及んでいるところです。そこで1点目に、
- 本県でコミュニティバス等を運行している基礎自治体数と路線数をそれぞれお答えください。また、複数の市町村を跨いで運行する路線数と割合もお示しください。
【知事答弁】
買い物や通院など、地域住民の生活交通の確保のため、本年3月末現在、県内42市町において約280路線のコミュニティバスが運行されている。そのうち、隣接市町村に所在する病院や駅等への移動を確保する広域運行路線は、40路線約15%となっている。
- 2017年に策定された「県交通ビジョン」には、「コミュニティバスの広域運行路線の普及に努める」と明記されており、各自治体が抱える現状の課題解決をするためには、市町村同士が連携して、例えば相互乗り入れを行ったり、委託業者を統一するなどスケールメリットを最大限に活かすことが必要であると考えます。
そこで2点目に、今後、県が市町村の意向を集約して窓口となり、将来を見据えて、積極的に民間事業者との路線の調整等にあたるべきだと考えますが、
知事の見解をお聞かせください。その上で、「県交通ビジョン」に明記されている「コミュニティバスの広域運行路線の普及」に関して、これまでの具体的な取り組みと進捗についてお示しください。
【知事答弁】
県では、広域地域振興圏域ごとに設置する「地方創生市町村圏域会議」において、市町村が有する課題の解決に向けた意見交換を行うとともに、沿線の市町村や交通事業者とともに、広域運行や相互乗入れ、利用促進のための企画に関する協議などを行っている。コミュニティバスの路線の調整等については、市町ごとに設置され、住民の代表や交通事業者などが参加する「地域公共交通会議」において、地域の実情に応じた議論や見直しが行われており、県は、委員やオブザーバーとして必要な助言や情報提供を行っている。広域運行路線の普及のため、県では、平成30年度から、市町村域を越えて運行するコミュニティバスに対する補助率の上乗せを行っており、広域運行路線は、昨年度7路線増加し、本年3月末現在、40路線となっている。
【冨永総括】
人口減少に伴うバスや鉄道の利用者数の減少は、今後も続くと予想されます。
加えて、この度の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言下においては、観光客だけでなく、通勤・通学客も激減し、生活路線の維持さえも困難になってきている鉄道、バス事業者もあるなど、今後は事業の縮小等に伴う路線の減便、撤退などが一層、懸念されます。現在、緊急事態宣言は解除されていますが、政府は在宅勤務を推奨したり、本県も県民の皆さまに対して、慎重に外出を行うように要請するなど「新しい生活様式」への移行が進んでいます。知事の言われる「交通ネットワークの維持」も日々刻々と状況がかわってきており、時代に即した施策と迅速かつ的確な判断が求められています。この際、改めて鉄道事業者等と県や各自治体の果たすべき役割を明確にした上で、知事には未来を見据えた「本県の今後の交通ネットワーク維持」について、以上3項目についてご答弁をお願い致します。
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(再登壇)
指摘と要望をさせて頂きます。
■線区収支の公表について、日田彦山線の議論とは無関係であるとの答弁があり、
その根拠に、昨年7月の定例記者会見での青柳社長の方針をあげられました。
しかしながら、公表は先月27日。直前の24日に知事は東峰村で初めて住民の方に対して説明会を開かれています。それを受けて、公表の前日26日は、渋谷村長がBRTの延伸案を受け入れる旨を表明されていて、これに対して、知事は「東峰村の皆さまにとって苦渋の選択だったと思う」と述べておられます。
まず今回の公表の在り方に対して、沿線自治体皆さまと知事が思いを同じとされているならば、その反応や思いも含めて九州知事会を通じて、JR九州へ抗議すべきだと指摘しておきます。
また、今回の公表のタイミングに関しても、配慮に欠けるものとして知事自身が抗議すべきであると指摘させていただきます。
■廃線後の代替バスの状況について
地域の実情に応じて、それぞれ路線の見直しを行いながら運行の継続を行うことで、今日までほとんどの路線において地域生活のための路線が確保、維持されていると考える
と答弁されましたが、
我が会派の中嶋玲子議員が2月の予算特別委員会において、廃線となった5路線を取り上げ「バス転換後にそのバス路線は廃線になり、辛うじて不便解消のために各自治体が西鉄等に依頼して一部運行している箇所もあるがJRの責任においてではない」と指摘しています。改めて、知事の答弁以上に、沿線の方々や利用者は不便を強いられており、自治体は経済的な負担を強いられているということ。また、バスへの転換は後戻りのできない結果を招くということをここで指摘させていただくと共に、そのような状況下にある自治体に対して、積極的な支援をして頂くようにお願いいたします。
■今後の交通ネットワークの維持のために
今定例会の一連の知事の答弁によると、日田彦山線の鉄道復旧を断念するに至った経緯に、今年2月の国会審議において国土交通大臣と鉄道局長から「最終的には鉄道会社の判断である」という最終的な国の判断が示されたことがあったとのことでした。国鉄時代、民営化の前後、上場の前後と今日に至るまで、現在のJR九州と国、県、沿線自治体の果たすべき役割は、その時々の法律とその解釈を背景に変遷してきたように感じます。(恐らく知事の脳裏には、いわゆる国鉄再建法やJR会社法とその改正法の文言があったのではないかと推察します。)今後、新しい生活様式への移行に伴って、様々に社会が変化し、交通政策も方向転換が必要になるかもしれません。そのような中であっても、知事は、福岡県のリーダーとして、常に県民に寄り添って頂きたい。国に対して言うべきことをしっかりと意見していただきたい。基礎自治体へのフォローはしっかりとしていただきたいと思います。 また、事業者に対しても、新たな関係性を構築し、地域の振興策、交通ネットワークの利用促進策を大きな枠組みで進められる福岡県になるようにお願い申し上げ、一般質問を終わります。