【一般質問文字おこし:全文】

冨永:民主県政クラブ県議団の冨永芳行です。通告に従いまして、動物愛護の推進、とりわけ、「ペットとの共生・適正飼養について」質問をさせていただきます。昨日20日から26日までが本年の動物愛護週間でございます。これまで関わって参りました犬や猫、すべての動物たちに思いを寄せながら質問に入らせていただきます。

まず、「第一種動物取扱業者(いわゆる犬猫等販売業者)に関する県の対応について」お尋ねします。2019年に成立した改正動物愛護管理法に基づいて、本年6月、環境省が施行した省令では、 適正な飼育でない状態を「爪が異常に伸びている」、「体表が毛玉で覆われている」等と定義しています。また、交配可能な年齢を原則6歳までとすること、従業員1人当たりの飼育頭数やケージの広さなどが具体的な数値や基準で示されています。改正前の同法では、例えば、ケージの広さについては、「動物たちが日常的な動作を容易に行うための十分な広さ」であったり、繁殖回数についても、「適切なものとし、必要に応じ制限する」などと実に、曖昧な表現であった為、業者によっては、「見解の相違」などを理由に行政の指導から逃れていたと聞いております。環境省によると、2013年度から2019年度の間に改正前の同法に基づき、全国の自治体が犬猫等販売業者などに立ち入った件数は、年間約2万件にのぼるものの、業務停止や登録取り消しの処分を受けたのは、7年間でわずか3件であったとのことです。本県においても、2013年度から2019年度の間に犬猫等販売業者に立ち入りを行った件数は、のべ2,181件。これに対して、「業務停止」および「登録取り消し」の処分はいずれもなかったと聞いています。このことからも、指導などを行う自治体側から見ると、根拠に乏しい法令であったこと、法改正の必要に迫られていたことは明らかであります。

ところで、今回の省令施行によって、既存業者の多くが施設の改修や新たな人手の確保、あるいは事業規模の縮小など、様々な負担を強いられることになります。規制強化によって、従来の飼育態勢を維持できなくなり、倒産や廃業する業者が出てくること、それに伴って、行き場を失う動物たちが出てくるとの声の高まりに対して、環境省は、従業員1人当たりの飼育頭数規制について、当初の本年6月完全施行を3年後の2024年6月完全施行とするなど、既存の業者に対する「激変緩和措置」を急遽、講じたとのことです。このように、動物愛護の考え方そのものが大きく変化をし、同時に動物愛護管理行政についても、対応が変わってくるものと考えます。

冨永Q:そこでまず、知事の動物愛護に対する基本的な認識をお聞かせください。また、今回の飼養管理基準の改正に伴い、犬猫等販売業者に対しては、どのように対応していくのかお聞かせください。併せて、法に違反するような悪質な業者に対しては、厳しく対処をしていく必要があると考えますが、知事の決意をお聞かせください。

服部知事A:

◎動物愛護に対する知事の基本的な認識について→動物は人にとってかけがえのない存在である一方で、安易な飼養や遺棄、虐待、悪質な業者による販売など、今なお解決すべき課題がある。県では、第3次動物愛護推進計画に基づき、今後とも、適正飼養の普及啓発や譲渡の促進などの取組を進めていくことにより、人と動物が共生でき社会の実現を図ってまいる。

◎飼養管理基準の改正に伴う犬猫等販売業者への指導について→今年4月、犬猫等販売業者などが遵守すべき飼養管理基準を改正する環境省令が公布された。この改正により、飼養管理頭数については、「従業者数に見合ったものにすること」という曖昧な基準から、「従業者1人当たりの上限を犬20頭、猫30頭」といった具体的な基準となり、既存業者については、令和6年6月までに、段階的に適用されることとなっている。これに伴い、ペットショップやブリーダーなどの犬猫等販売業者のうち、新たな基準を満たしていない業者については、犬猫の不適正飼養や遺棄につながることが懸念されている。このため、県では、登録申請書類等で把握している頭数が、新たな基準を満たさない可能性がある業者に対し、優先的に立入調査を実施し、飼養実態に応じて計画的な頭数管理や必要な従業者の確保等、個別に指導助言を行っているところである。

また、今回の改正において、基準が明確化されたことから、勧告、命令、取消等の処分に当たっては、その判断が客観的にできるようになった。県としては、業者に対して丁寧に指導助言を実施していくとともに、改正された基準に違反している業者に対しては、厳正に対処していくことにより、犬猫の適正飼養を推進してまいる。

冨永:次に、一般家庭における適正飼養、とりわけ多頭飼育問題についてお尋ねします。環境省が本年3月に策定した『人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン』では、多頭飼育問題とは、多数の動物を飼育している中で、適切な飼育管理ができないことにより、『①飼い主の生活状況が悪化すること』、『②動物の状態が悪化すること』、『③周辺の生活環境が悪化すること』以上、3つのいずれか、もしくは複数の状況が生じていることと定義をしています。また、多頭飼育問題が生じる社会的背景として、就労困難や失業による収入減少、疾病、障がいなどによる心身・健康の喪失、ライフステージの変化などによる生活困窮、社会的な孤立などが例示されています。

社団法人ペットフード協会の調査によると、2020年10月時点での全国の犬の飼育頭数は約848万9,000頭、猫の飼育頭数は約964万4,000頭と推計され、全体の飼育頭数としては、前年から減少しています。しかしながら、2020年に新たに飼われたペット、新規飼育者によって飼育開始された頭数は、2019年と比べて、犬で約58,000頭、猫で約67,000頭増加しているとのことです。これは、新型コロナウイルス感染症の影響で在宅時間が長くなったことや、長引く自粛期間に、人々が犬や猫を癒しの対象として飼育を始めたことが要因であるとされています。

こうした傾向は、これまで緊急事態宣言の対象地域に4度指定され、県民の皆さまに不要不急の外出自粛を要請してきた本県でも例外なく起きている事象であると考えております。また、これまでは、主に、高齢者世帯の問題として扱われてきた「多頭飼育崩壊」の問題ですが、新型コロナウイルス感染症の影響で、経済的な困窮や社会的な孤立が広がる現在、どんな世代の飼い主にも起こり得る問題に発展していると感じています。こうした現状からもポストコロナ社会において、新たな多頭飼育問題が顕在化、更に深刻化するのではないかと危惧しているところです。

冨永Q:まず1点目に、多頭飼育問題に対する知事の認識をお聞きします。その上で、県はこの問題を未然に防ぐために、どのように取り組んでいくつもりかお聞かせください。飼育を新たに開始される方が増加している一方で、保護犬や保護猫の譲渡を行う団体やボランティアの方からは、緊急事態宣言によって、譲渡イベントなどが開催できず、新たな飼い主を探すことに大変、苦慮されている とのお声を多く聞かせていただいているところです。そこで2点目に、現在、県動物愛護センターと連携している団体数はどのくらいあるのか?また、これらの団体とどのように連携しているのかお聞かせ下さい。

いずれも、動物の健康は言うまでもなく、飼い主だけではなく、近隣住民の暮らしや健康にも直結する問題であり、公衆衛生をはじめとする地域全体の問題であると考えております。ワンヘルスの推進を掲げる福岡県の知事として、前向きな答弁をお願い致します。

服部知事A:

◎多頭飼育問題の未然防止対策について→多頭飼育は動物の飼養環境の悪化を招き、動物虐待となるおそれがある。また、悪臭や騒音の原因となり生活環境の悪化を招き、近隣住民とのトラブルが発生することも懸念される。したがって、多頭飼育を早期に発見し、問題を未然に防止することが重要と考える。県が実施した一昨年度の調査では、多頭飼育により周辺住民とトラブルが発生した件数は20件で、そのうち15件が60歳以上の方によるものであった。このため、県では、高齢者のトラブルを未然に防ぐため、昨年度から、介護関係職員等を通じて、高齢者に対する適正飼養の啓発を行い、必要に応じてアドバイザーを派遣する事業を実施している。一方で、多頭飼育問題が生じる背景として、生活困窮や社会的孤立等があり、社会福祉的支援が必要な飼い主が多いと言われている。このことから、高齢者だけでなく、生活困窮者や社会的孤立者と接する機会が多いケースワーカーや民生委員等の社会福祉関係者と連携し、多頭飼育問題の未然防止対策の更なる推進を図ってまいる。

◎動物愛護団体との連携について→福岡県動物愛護センターでは、平成22年度から愛護団体を通じて譲渡先を探す取組を行っており、現在、30団体と連携している。愛護団体を通じた譲渡を更に促進するため、昨年度から、これまで各団体が発信していた譲渡情報を、センターのホームページに一括して掲載した結果、今年4月のアクセス数は約14万6,000件と、前年同月の約5万4,000件に比べ約3倍に増加した。また、愛護団体のメンバーを対象に、動物愛護管理法の基本理念や感染対策、犬猫への接し方などの研修を実施し、人材育成に努めている。さらに、昨年度から、新たに所有者の明示を推進するため、マイクロチップの装着に対する愛護団体への助成も行っているところである。今後とも、愛護団体との連携を強化し、動物愛護の更なる推進を図ってまいる。

冨永要望:

ご答弁いただきました。それぞれ要望させていただきます。

■まず、悪質な業者への対応につきまして

今月上旬、長野県松本市で、犬を劣悪な環境で飼育していた疑いで販売業者が警察の家宅捜索を受けています。飼育していた犬の頭数は、届出の600頭をはるかに上回る約1,000頭。周辺では、鳴き声や悪臭に関する苦情が多かったとの事です。先ほども申しましたが、ペットブームのような状態にあり、それに伴って届出以上に過剰に繁殖・飼育をしている業者が多いと聞いています。3年後の新たな管理基準の完全施行にむけて、県内事業者とともに適正飼養の徹底に取り組んで頂きますようにお願いします。また、攻撃的な対応をとる悪質な業者や飼い主に対しては、県警察など関係機関と連携して頂き、ネグレクトを含む動物虐待は絶対に許さないという強い姿勢で臨んで頂きますように、重ねてお願い申し上げます。

■次に、多頭飼育問題の未然防止策についてです。

多頭飼育崩壊が高齢者世帯に限った問題ではないという知事の認識に一安心しております。まさにいつ、どこで起きても不思議ではありません。また、環境部局と福祉部局の連携は既に行っている市町村もあります。しかしながら、例えば、人口3万人規模の自治体では、対応にあたることのできる環境部局の担当者は2名程度。多岐にわたる業務の中で個別案件にきめ細かく対応するのは難しい現状だと感じました。また、福祉部局や保健所についても、コロナウイルス感染症の対応で業務過多な状況が続いております。実際に、多頭飼育の現場に伺って印象的だったのは、地元区長や地域の愛護団体の方が飼い主の方と信頼関係を築いておられ、行政との仲介役を担われていることでした。先ほど、センターと連携されている団体については、言及がありましたが、地域で自ら活動費を捻出して、いのちを繋ぐ大きな役割を担ってくださっている方もいらっしゃいます。そうした方々にも、新たな感染症予防に関する情報や備えなどが適切に提供される体制づくりを強く、要望いたします。

■最後に知事におかれましては、

人、動物、環境を所管するそれぞれの関係者が、分野横断的に連携して、課題解決ができる福岡県の実現のために 強いリーダーシップを発揮していただきますようお願い申し上げ、私の質問を終わります。