【9月定例会】一般質問全文書き起こし 

民主県政クラブ県議団の冨永芳行でございます。早速ですが、通告に従いまして質問をさせて頂きます。2020年に改正された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」では地方公共団体でマンションの管理適正化を図る制度が創設され、2022年に施行されています。具体的には、推進計画の策定、管理者への助言、指導、勧告や管理計画の認定制度などが新たに規定されています。

マンション管理適正化推進計画の策定や管理計画の認定は、市域では市が、その他の町村域では県が担うこととされており、本県でも、まもなく 『福岡県マンション管理適正化推進計画』が策定され、管理計画の認定制度が開始されるものと承知しています。そこで、県推進計画の対象域である郡部(糟屋郡7町)選出の議員の1人として、20年先、30年先を見通して知事にお尋ねしたいと思います。

建築着工統計調査等によると、築40年以上経過した「高経年のマンション」は、2022年度末 時点で、県内に約4.6万戸あるとされ、分譲マンション全体の約12%を占めます。そのうちの多くが両政令市に所在し、区分所有者の高齢化や住戸の賃貸化、管理組合役員の担い手不足によって、総会開催が困難となる等、マンション管理の適正化には様々な課題があると言われています。

一方で、2018年の住宅・土地統計調査によると、本県の町域に所在する半数程度のマンションが、築20年以内に建てられた比較的新しい建物であり、居住者も若い世代が多いことから、マンションの適正管理について無関心な傾向が見られるとの指摘もあります。

適切なマンション管理を行うことは、昨今問題となっている建物の老朽化による外壁の落下事案等を未然に防ぐことが期待できるだけでなく、物件(資産)価値の向上にもつながることから、居住する住民はもとより、各地域や市町村にとっても安心安全なまちづくりを進める上で大きなメリットがあるものと考えます。

こうした観点からも、県民の生命・財産を守るために、マンションの適正管理の推進における県の果たすべき役割は非常に大きいと言えます。

そこで1点目に、マンション管理適正化の推進のためには、マンションのある全ての市においてマンション管理適正化推進計画が策定されることが重要だと考えますが、県内各市の策定状況についてお示しください。その上で、未策定の市に対して、県はどのようにはたらきかけを行うのか?知事の考えをお聞かせ下さい。

2点目に、県や市がマンション管理適正化推進計画を策定することにより、管理計画の認定制度がスタートすることになります。この認定を受けることによる効果はどのようなものか、また認定の取得促進のために、県はどのような取り組みを行っていくのか、知事の考えをお聞きします。

3点目に、マンション管理適正化推進計画の策定や管理計画の認定制度は、マンション管理適正化法上、県と市がそれぞれ実施主体となっていますが、町村域におけるマンション管理の適正化のためには、町村の役割も重要だと考えます。町村がマンション管理の適正化に向け、しっかりと役割を果たすために、県はどのように取り組まれるのか、知事の考えをお聞かせください。

次に、既設エレベーターの安全確保の促進についてお聞きします。

2006年に東京都港区の公営住宅で高校生がエレベーターに挟まれ死亡する痛ましい事故が発生しました。その後も2件の死亡事故を含む、少なくとも10件のエレベーターの戸開走行事故事案が報告されています。国土交通省は、2009年9月28日以降に着工されたエレベーターに対し、戸開走行保護装置の設置を義務付けていますが、それ以前の既設エレベーターは、『既存不適格』として、国の社会資本整備総合交付金などを活用して改修、後付けする様、各都道府県の建築主務部長に対して通知文を出しています。

『戸開走行保護装置』とは、エレベーターのドアが開いて走行した場合、それを検知し、直ちに緊急停止をさせる装置、乗客の挟まれ防止や転落を防止するための装置のことを言います。

本年1月に公表された戸開走行保護装置の設置状況調査によると、2021年度に全国で定期検査報告が行われた約74万台のエレベーターの『戸開走行保護装置』の設置率は、わずかに32%。本県においても33.1%と設置が進んでいないのが現状です。既設エレベーターの改修工事については、国交省の様々な補助制度がありますが、こうした国の補助制度を民間が活用する際には、地方公共団体が整備する同様の補助制度と併用することが条件とされています。

一方で、地方公共団体が公共建築物に設置したエレベーターを改修する際には、民間とは異なり、直接的に国の補助制度を活用することができます。これが民間設置と地方公共団体設置のエレベーターとの差、戸開走行保護装置の設置率の差の一因であると考えます。実際に、国が公表した資料では、本県内の地方公共団体の本庁舎におけるエレベーター(121台)の戸開走行保護装置の設置率は、56.2%で九州沖縄では最も低い水準であるものの、先述の全国平均32%を大きく上回っていることがわかります。

本県のホームページで『戸開走行保護装置と既存不適格について』という項目を見ると、『既存不適格は、違法ではありませんが、現在の安全の基準を満足していないため、早急な対応が望まれます。戸開走行保護装置が設置されていないエレベーターの所有者・管理者の皆様におかれては、当該装置を設置する改修工事等の実施をご検討ください。』との改修を促す記述はあるものの、県の補助制度はおろか、国の補助制度のリンクや具体的な案内さえない状況です。先日、担当課に確認しましたが、県の補助制度はないとの回答でした。

そこでまず1点目に、既存不適格エレベーターにおける戸開走行保護装置の設置の必要性に対する知事の認識をお聞かせ下さい。その上で、県として既存不適格とされたエレベーターに対して、行ってきた取り組みがあれば、お聞かせください。今後、本県内の既存不適格のエレベーターの改修の促進及び戸開走行保護装置の設置率を向上させるためには、民間が国の補助制度を最大限に活用することが有効であると考えます。

そこで2点目に、戸開走行保護装置の設置率向上に向けて、県をはじめとする地方公共団体が早急に補助制度を整備すべきだと考えますが、知事の見解をお聞かせください。

以上、知事の真摯な答弁を求めます。

【知事答弁】県内各市のマンション管理適正化推進計画の策定状況と未策定の市に対する県の取り組みについて

○現在、北九州市、福岡市、久留市、豊前市の4市が策定済みであり、こ のほか、8つの市が今年度中の策定を予定している。

○ 県としては、来月に予定している市及び町村向けの説明会において、マンシ ョン管理の適正化に関する県全体の方針を説明するとともに、未策定の市に対 しては、作成の手順などを記載したガイドラインを示し、早期に計画を策定す るよう働きかけてまいる。

【知事答弁】マンション管理計画の認定を受ける効果と認定制度の普及のための取り組みについて

○この認定を受けることによる効果としては、県や市が認定したマンションを 公表することで、管理組合の運営状況や資金計画などが適切であると評価され たマンションとして、市場価値の向上につなげることができる。

①認定マンションの購入者が住宅ローン金利の優遇を受けられる

②管理組合が大規模修繕工事をする際の借り入れ金利の優遇を受けられる

③区分所有者が大規模修繕工事の翌年度の固定資産税の優遇を受けられる

といったメリットもある。

○ 県としては、年3回実施している管理組合向けセミナーによる普及啓発のほ か、マンション管理に関する相談窓口での対応やマンション管理士の派遣など に取り組んでいるところであり、今後もこのような取組を通じてマンション管 理計画認定制度の普及に努めてまいる。

【知事答弁】町村がマンション管理の適正化に向けた役割を果たすための県の取り組みについて

○地域に所在するマンションが適正に管理されることが、地域の安全・安心に つながることから、町村には、県によるマンションの管理状況の実態把握や、 管理の適正化を図るための指導・助言の際に、連携・協力していただきたいと 考えている。

○そのため、県としては、来月に予定している町村向けの説明会や各種会議な どの様々な機会をとらえて、福岡県マンション管理適正化推進計画を丁寧に説 明し、互いに連携しながらマンション管理適正化に向けて取り組んでまいる。

【知事答弁】既存不適格エレベーターにおける戸開走行保護装置の設置の必要性に対す る認識と取組について

○既存不適格エレベーターは違法ではないが、現在の安全の基準を満足してい ないため所有者、管理者による早急な対応が望まれる。

○このため県では、所有者、管理者に対して県のホームページやパンフレットで、戸開走行保護装置の設置が挟まれ事故を防止することなどについて周知・啓発を行っている。

【知事答弁】戸開走行保護装置の設置に係る補助制度の整備について

○国の補助制度には、様々な災害や事件事故を契機に法律が強化され より既存不適格となった建物の安全性を向上させるため、地方公共団体が活用 できる様々なメニューが用意されている。 そうした中で、県では、大地震による建物やブロック塀の倒壊による甚大な被害を防止し、さらには避難活動や救援・救助活動の妨げとならないよう、 の補助制度を活用して、建物の耐震改修や危険なブロック塀の撤去に係る費用 への助成を行っている。

○エレベーターの安全性については、建築基準法に基づき毎年行われる点検により確保されるものと考えている。 このため、戸開走行保護装置の設置に係る補助制度の整備よりも、まずは、 所有者・管理者においてこの定期点検をしっかり行っていただくことが、重要であると考えている。

ご答弁ありがとうございました。指摘と要望をさせていただきます。

定期点検を行えば、エレベーターの安全性は確保されるという答弁でしたが、令和3年度の県所管の定期検査率は、97.2%。この定期検査をいくら行っても、 戸開走行保護装置の設置率向上には繋がりませんし、依然として、既存不適格の状態が解消されることもありません。

つまり、知事の答弁を一部引用させて頂くと、違法ではないが、現在の安全基準を満たさない状態を継続させてしまう。という事になり、所有者、管理者による早急な対応が望まれる。という答弁とも整合性がとれないように感じます。

先ほど、民間設置と地方公共団体設置のエレベーターにおける戸開走行保護装置の設置率の差について述べましたが、知事や我々も使用する本県の行政棟及び議会棟のエレベーターは18台。改修も進み、当該装置の設置率は、90%を超えています。

今般のマンション管理適正化推進計画の策定及び管理計画の認定制度の開始によって、マンションに限らず、建物管理への県民の皆さまの意識が大きく変わってくるものと考えます。そうした中で、住民の方や所有者の方などがエレベーターの改修を希望しても、繰り返しになりますが。現在のままでは民間が国の補助制度を活用することはできません。

全国の自治体の中には、戸開走行保護装置だけではなく、地震(じしん)(じ)(とう) 管制(かんせい)運転(うんてん)装置(そうち)や耐震設備に対する助成を開始している先進事例もあります。こうした事例も調査研究して頂き、事故を未然に防ぐためにも、ブロック塀対策同様に、補助制度の整備を検討していただくこと、また同時に国に対しては、地方公共団体と同様の条件で、民間が国の補助制度を活用できるよう、「条件の緩和」を求めて頂くことを強く要望し、私の質問を終わらせていただきます。