【常任委員会視察記】

 先日、所属する建築都市委員会の『青森県立美術館視察』に参加させていただきました。
老朽化で建て替えが検討されている福岡県立美術館(昭和60年建設)の建設予定地については、本年1月に大濠公園に決定したと小川知事が発表しています。
昨年は、富山県立美術館を見学させて頂き、自然との共生と同時に頻発する災害から所蔵品を守り、地域の避難所となるべく新しい役割を担っているということを学んできました。今回の視察記も少し長めですが、私の頭の中を整理し、今後に役立てるためにも事前の予習も含めてご報告をさせて頂きます。

■全国にある「都道府県立」の博物館・美術館■
★47都道府県のうち、博物館設置数44・非設置数3、美術館設置数42・非設置数5です。(但し下記※に注意)
★愛知県は、県立の博物館はありませんが、県立に比肩する内容をもつ博物館として名古屋市立博物館(名古屋市)が存在する。
同様に大阪にも、大阪市立美術館・東洋陶磁美術館などが存在している点には留意が必要です。
※京都府には、登録博物館・博物館相当施設・重要文化財公開承認施設のいずれの範疇にも入りませんが、丹後郷土資料館・山城郷土資料館・堂本印象美術館などの
府立の博物館・美術館があります。また財団立なため、府立ではないが、京都府京都文化博物館(公開承認施設)のような府が設立に深く関わって設立された博物館もあります。

■(冨永が考える)青森県立博物館の魅力■

①立地の良さと規模感
 隣接する三内丸山遺跡の発掘現場に着想を得て設計された独特のデザインは、400名の公募の中から選ばれた青木淳氏の設計。建築が好きな方も多く来館されるとのこと。
⇒三内丸山遺跡は、世界遺産登録を目指しており、今後世界からも注目される可能性が高い。北海道と東北6県の道立・県立美術館の中で最も新しく(平成18年)延床面積は、福岡県立美術館の2.36倍。展示面積は、10.48倍。

②建物のデザインが秀逸
 発掘現場のトレンチ(壕)のように地面が幾何学的に切り込まれており、その上から白く塗装された煉瓦の量塊が覆いかぶさった構造体になっている。
展示空間も土の床や壁が露出する中、白を基調とした空間が演出されていた。木や「a」をモチーフとしたシンボルマークやロゴはさりげなく「青森」を感じることができ、
視覚的にも優しく楽しい。また、『青森フォント』と呼ばれるオリジナルの書体が統一して使用されており、デザイン性の高さを感じた。水平、垂直、斜め45度の同幅の直線のみで構成されており、シンプルでおしゃれな感じ。
(車椅子のピクトグラムの車輪部分だけ例外とのこと。)次回の私の選挙リーフレットにも採用したいなと思ってしまう。(写真参照)

③収蔵品のスケールが大きい/身近である。
 所蔵作品は4,767点(令和元年6月1日時点)うち、青森県出身の作家数は棟方志功をはじめとする60名で作品数は4,020点。ダリやピカソに加えて、
同美術館の目玉はシャガールの縦9メートル、横15メートルの巨大なバレエ「アレコ」の舞台背景の全4幕のうち3点(第1、2、4幕:1994年に計15億円で取得)を収蔵していること。
更に、第3幕を収蔵する米国のフィラデルフィア美術館の改修工事期間中(~2021年3月)は、4点すべてを同美術館のアレコホールで1度に見ることができる!ということで圧倒されつつも大興奮。その他にも、「あおもり犬」など屋外の巨体な展示物や撮影可能なスペース、現代作家の作品も多く、とても親しみやすさを感じた。

④発信力の強さ
・各種SNSのフォロワー数が非常に多い。
(11月6日現在)Twitter:62,110/Facebook:10,000/Instagram:7,059
・コレクション展を年4回、企画展を年間3回開催。東京で好評実績のあるパッケージの企画展は行わず、拘った展示を行っている。

⑤鋭い経営感覚
「平成30年度 都道府県立美術館の来館者数の状況(文化庁)」
入館者数:265,710人(東北1位、全国10位)うち、85%が県外からの来館者。
外国人入館者数:東北1位、全国5位
トリップアドバイザー2019美術館ランキング:全国7位
各種の教育普及活動を行いながら、アートツーリズムでの誘客を図っている。青森県全体でアートの振興をするために、県内の5つの美術館で連携。
既に、共通のホームページを開設し各種イベントの開始や今後の連携事業の検討を行っている。

⑥総括
運営主体が県直営であり、青森県観光国際戦略局の出先機関という位置づけが既存の美術館との大きな違い。学芸員を含めた様々なキャリアの人材配置に加え、
自前のデザイナーや各種機器を揃え、フットワークの軽さや柔軟性や創造性を感じた。民間出身の私からは、デメリットが見えにくかったが、教育委員会側の意見を伺って参考にしたいと思う.
コロナ禍での集客(ターゲット)のあり方や独自性の出し方が福岡の新しい美術館建設にあたって重要だと感じた。

⑦おまけ
空港集合の視察時には、空港に隣接する志免町(五斗蔵交差点)で辻立ちをしてから空港に向かうのがルーティンなのですが、今回はなんと、のぼり旗だけ持って事務所を出たようで、辻立ちが10分経過したところで違和感に気付き、事務所にスーツケースと防寒着を取りに戻り、集合時間ギリギリ間に合うという真っ青な経験をしました。以後、気を付けます。